<知世side>
電話を切った後、知世はある事に取りかかり始めた。
ある事とは、浴衣を縫う事である。彼女の傍には、作りかけの浴衣と既に出来上がった浴衣がある。出来上がった浴衣というのは、桃色の浴衣である。つまり、これは桜に着せる浴衣だ。
作りかけの若葉色の浴衣を手に取ると、知世は縫い始めた。
浴衣を縫いがら、
知世「お祭りで浴衣を着たさくらちゃんと李君を私がビデオを撮る!超絶、幸せですわ!でも、李君の浴衣、11日のお祭りまでに出来上がるんでしょうか?なんだか、不安ですわ!急いで縫わねば!」
と知世がまた、とんでもない事を考えている事、桜と小狼は知る由もなかった。
<桜side>
その頃桜は、映画の事を考えていた。
桜「小狼君、どんな映画にしてくれたんだろ?怖い映画だったら、やだなあ!ほえええ!あっ!11日どこに行くか、小狼君に聞くの忘れてた電話で聞いてみようかな?でも、夜遅いし明日にしようかな?どうしよう!」
ケルベロス「どないしたんや、さくら?また、小僧の事か!」
桜「うん!11日どこに行くか、小狼君に聞くの忘れちゃったの!今聞こうか迷ってたの!」
ケルベロス「11日?一週間も、後やないか!そんなん明日、小僧に聞いたらええんとちゃうんか、さくら?」
桜「そうだよね?ケロちゃん!じゃあ、明日、聞いてみるよ、小狼君に!お休みケロちゃん!」
ケルベロス「さくら、お休み!」
<小狼side>
知世が電話を切った後、小狼は山崎に電話をかけていた。
小狼「雨寺稲荷神社について、大道寺がな・・・・・」
山崎「ああ、それね!雨寺稲荷神社ってたしか、大道寺さんの家の方角にあったと思うよ!そこはね、あきら君のおばあちゃんが経営している神社だよ!李君!」
小狼「ありがとう!山崎!」
山崎「聞いてくれるかい?李君!でね、その神社っていうのはね、稲荷神社っていうくらいだからねえ、昔、狐が結婚式を挙げたところらしいよ!」
小狼「へえ、そうなのか?」
山崎「狐が結婚式を挙げた日はねえ、必ず雨が降るらしいよ!その神社のお祭りは稲荷祭りっていうだよ!雨を祝うお祭りらしいよ!お供え物はお稲荷さんなんだよ!ご神体が狐だからね!」
小狼(雨のお祭り?なんか、いやだなあ!)
「俺、そんなお祭り行きたくないぞ!さくらも、大道寺も、三原も嫌がるだろ!山崎!」
山崎「でも、その日に行かないと大変な事になるんだよ、李君?」
突然、山崎は千春に電話を奪われる。
千春「あのね、李君?山崎君の言ってる事は迷信だから、気にしなくていいからね!」
小狼「迷信?なのか?」
千春「うん!ホントに気にしなくていいからね!あんたはもういいかげんにしなさい!」
山崎「あははは!」
千春は山崎の首を揺らす。
山崎「ねえ、千春ちゃん!今年の狐役(きつねやく)って、誰がやるんだろうね?」
千春「さあ!私が知ってるわけないでしょ!町の人がやるんじゃないのかな!」
山崎「やっぱり、そうだよね!千春ちゃん!」
小狼「狐役って、毎年違う人なのか?」
山崎「そうみたいだね!」
ピリリリ・・・・・
千春「山崎君?メールみたいなんだけど、・・・」
山崎「ホントだ!メールだね!李君、ちょっと待ってね!」
小狼「ああ!」
山崎は携帯電話のメールを確認した。メールにはこう書かれていた。
―To :あきら
From:山崎 貴史
件名:こんばんわ。山崎君。
夜分、遅くにごめん。お狐様(花嫁)役が決まった。
本文
こんばんわ。山崎君。
夜分、遅くにごめん。お狐様(花嫁)役が決まった。花嫁役が決まったのは、いいんだが、何故か、沢山の花嫁役の候補が、・・・・・。それに何故か、猫の美琴(みこと)がミー、ミー!とうるさいし、詳しい事はまた、連絡する。明日はお休みだけど、お祭りの演舞練習があるので、もう、寝る。お休み。
山崎「演舞練習か!観に行こうかなあ!」
千春「演舞練習?山崎君、私も、興味ある!」
小狼(コイツらは何考えてるんだ?後、猫の美琴か!俺はこっちの方が気になるなあ?)